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安岡 智史
安岡 智史
イオンドットコム株式会社
デジタルマーケティング事業本部
本部長
大学卒業後、コンテンツプロバイダを経て2006年に大手Webサービス企業に入社。 大手ECモールにおけるWEB解析ツールの導入やグロースハックを推進するチームのマネジメントを経験後、マーケティングセクションにてWEB行動データとCRMデータを統合した分析環境の構築やロイヤリティプログラムの開発に従事。 2015年イオングループに転じ、オフラインデータの活用や、デジタルマーケティング全般を担当。

プロの中途人材を強化する
デジタル集団イオンドットコム

イオングループには上場企業26社を含む約300の事業会社がありますが、イオンドットコムではそのうち国内のグループ会社に対してデジタル化の支援を行なっています。業務の範疇は、ECやネットスーパーの運用に始まり、倉庫やコールセンター管理まで、幅広い領域を担っています。 ​

中でも私の統括するデジタルマーケティング事業本部では、例えばメーカーとタイアップし「イオンのお店で該当商品を一定額購入するとWAONポイントをプレゼントする」といった「マストバイキャンペーン」と呼ぶ施策や、ECやネットスーパーへの集客やデバイスの位置情報を活用して実店舗への集客を行う「デジタルプロモーション」と呼ぶ施策などに責任を持っています。「マストバイキャンペーン」の場合は実店舗で購入したレシートを使ってウェブ上で応募する、というオフラインとオンラインの横断施策も実施しています。

​イオンドットコムの従業員は中途採用が多いです。イオングループ全体では新卒採用に重点を置いていますが、デジタルマーケティングの経験値があり、それを事業として営むことに明るい人材をプロパーのみで供給するのは難しいため、デジタルの分野においては外部からの人材採用に力を入れています。​ 反面、私たちのマーケティング活動は小売のサプライチェーンと連携して行う必要があるため、デジタルの知識だけで対応するのも難しく、プロパーで小売業を理解している事業会社メンバーと、デジタルの知見を持つイオンドットコムのメンバーが協力し、様々な施策を実施しています。​

イオングループは小売が中心ではありますが、金融業も営み、またイオンシネマのような専門店、さらにドラッグストアのウエルシアなど、多様な事業体を抱えています。事業体が多いと、実店舗においては商圏が重複するなどの理由により必ずしも100%の協力体制を築くことが難しいケースもありますが、デジタルには時間や空間の制限が少ないので、データを蓄積して活用するといった取り組みも積極的に展開しています。

​私たちはイオングループの各社と連携し伴走しながらデジタル化の支援を行なっていますが、現在の課題としては、イオンドットコム自体は自ら事業を行なっている訳ではないため、説得力がどうしても伴わない場面があります。よりリスクをとってイオンドットコムがデジタル事業を立ち上げ、育成していくための取り組みを模索中です。

デジタルコンテンツのファンミーティングで、
リアルの面白さに気づいた

私は大学時代にインターネットに出会い、これからインターネットが絶対面白い産業になると思ってデジタルハリウッドにも通っていました。卒業後は制作会社に入社しましたが、希望していたクリエイティブ職に就くことができず、結局1年で辞めてしまいました。

​その次は、今となっては懐かしいiモード用のコンテンツプロバイダに転職しました。月額300円で待ち受け画像をダウンロードできるようなサービスを運営しており、今考えればサブスクリプションビジネスの走りですよね。​

その会社は元々出版社にいた人が立ち上げた会社で、グラビア写真集向けに撮影されたものの、本編には採用されなかった写真の権利をカメラマンから買い取って待ち受け画像化するというもので、最盛期には10万人ものサブスクリプション会員を抱えていました。​

他にもドラマ「冬のソナタ」が流行していたときに、月額980円の韓流ポータルサイトを運営したりしていました。韓国の放送局から芸能ニュースの素材を買い取り、字幕を付けたり、韓国に詳しいナビゲータによる解説を付け足して放映する、といったこともやっていました。

​両方ともビジネスとしては面白かったのですがやはりターゲットが決まっているニッチコンテンツであったため、より広い顧客と接するビジネスがしたいという思いから、2006年に楽天に移りました。 ​

楽天では、楽天市場のメルマガ作成やコンテンツ運用を行う編成部に配属されました。入社してすぐに事業全体を俯瞰したアクセス解析のデータがないことに気がつきました。最初の制作会社ではWebtrendsを、その次のコンテンツプロバイダではRTmetricsを使っており、楽天に入ったらもっとすごい環境があるのかと期待していたので、拍子抜けしました。ちょうどそこにOmniture導入のプロジェクトが立ち上がったので、無理やり手を上げてやらせてもらいました。



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  • 長いPOC期間を経て本格導入が一段落すると、そこから導入に対するROIが求められるようになります。数字に強くUI改善などにデータを活用できる人材が1人、2人と増えていき、楽天市場事業全体のデータマネジメントを任せてもらいました。

    ​楽天市場全体のサイトナビゲーションを俯瞰したKPIを作り、それを開発チームや編成チーム共通のKPIとすることで、PDCAの高速回転と組織的にUIのグロースハックを行うということをやっていましたが、あるところで機能やUIの改善が部分最適に向かっているな、と感じるようになりました。​



例えば「検索からのコンバージョンレートが何%改善した」という成果があったとして、それ自体は誇るべきものですが、その影響で他の使い勝手が悪くなっていないか、全体的なUXの改善に繋がっているのか、という疑問が払拭できませんでした。​​当時のWeb解析データは訪問セッションが分析の基本単位でしたが、一方でマーケティング部はすでにユーザーIDを基本単位としており、LTVの最大化という目標のために施策を実施していました。ユーザーIDを基点とすることで全体最適につながるという想いから、その後マーケティング部への異動を願い入れてもらうこととなりました。

  • ユーザーIDを基点にした
    全体最適へ。

  • 当時のWeb解析データは訪問セッションが分析の基本単位でしたが、一方でマーケティング部はすでにユーザーIDを基本単位としており、LTVの最大化という目標のために施策を実施していました。ユーザーIDを基点とすることで全体最適につながるという想いから、その後マーケティング部への異動を願い入れてもらうこととなりました。

マーケティング部ではIDによる購買データとサイト内の行動データを統合し、ポイントプログラムを利用した販促キャンペーンなども行い、それはそれで有意義だったのですが、楽天自体はオンラインビジネスで保有データの大半がオンラインに限られていたため、いつからかより規模の大きなオフラインの小売・流通にも興味を持つようになりました。その時ちょうどイオンがデジタルに力を入れるタイミングに縁があってイオンに移り、今に至ります。

韓流のポータルサイトを運営していたときは、オフラインのファンミーティングにも関わっていたのですが、リアルの場所に熱量の高いファンが集うという体験はインターネットからキャリアを始めた私には却って新鮮な体験でした。

デジタルだけだと、会員数のような指標は数字としては細かく把握できますが、実際にどのような人たちなのかを知ることは難しいです。お客さんの生身の反応を実際に知ることができるというのは、私のキャリアにおいてリアルの原体験となり、それもあって今はイオングループに辿り着いたのかも知れません。

急速なデジタル化により
小売は再び面白い業界になった

イオングループには日本全国に58万人の従業員がいて、これは東京の杉並区の人口に匹敵します。イオンが抱えている課題は、日本全体の課題や地域の課題と等しく、例えば人口減による働き手の減少にどうやって対応するかの解決策が求められています。

イオンが抱える課題の解決は、そのまま日本の課題の解決に繋がる部分があると感じますが、過去のしがらみや成功体験が足枷になってしまっているところも見受けられます。そのチェンジマネジメントをやり切り、国内のグループ会社や、グループ外にも広げていくことが当面の目標です。

小売におけるデジタル化は今非常に面白い局面にあります。アメリカでは小売大手のWalmartとKrogerが相次いでマイクロソフトとの提携を発表しました。テクノロジーを駆使して人材不足の克服や業務の効率化を行うというプレッシャーが背景にあります。

業界としての小売は古くからありますが、デジタル化の観点において最近の小売には大きな変化が起きており、新しい取り組みを行いやすい時期に差し掛かっているため、イオンでもどんどん新しいことにチャレンジしていきたいと考えています。

  • 働き方の効率化まで
    範囲を広げないと、
    本当のデジタル化はできません。

  • 一方で、小売店舗の現場で働く人の負担はどんどん増えています。様々な販促施策に加えて、最近ではアプリやLINEなどの勧誘もしなければなりません。デジタルの施策が増えるほど、オフラインの業務も増えてしまっている状況をまずは変えたいと思います。直接そういうミッションを負っているわけではないのですが、店舗の働き方の効率化まで範囲を広げなければ、本当の意味でのデジタル化はできないという危機感も持っています。

イオンに来て良かったと思うのは、小売ビジネスは人々の生活に密着しているという点です。東日本大震災があったとき、イオンの気仙沼店も被災しましたが、従業員は地域の人のために少しでも早く営業を再開させるべく奮闘し、店内が破損して使えないなか、建物の屋上を利用して営業を行いました。

3年前の熊本地震でも、昨年の北海道の地震でも、商品供給を復旧させるためにグループの総力を上げた取り組みを行なっていました。そういった取り組みに、今後はデジタルの技術を加えることにより、被災状況下における利便性もより向上できるのではないかと思っています。

小売業界成長のヒントは中国にある

小売業界全体の流れとしては、中国の発展の目覚ましさに注目しています。イオンも今年に入り、中国にデジタルマネジメントセンターを設立し、現地のデジタル活用のノウハウや技術を吸収し、オペレーションでの活用を推進しています。

  • 「お得」をプロモートする
    アプローチは遅かれ早かれ
    限界に行き当たります。

  • 私は利便性に勝る価値はないと思っています。デジタルにしろリアルにしろ、クーポン配布や特売などのように「お得」をプロモートするアプローチは遅かれ早かれ限界に行き当たります。企業として投下できるリソースが限られている中で、そのリソースは「お得」を実現するよりは、利便性の追及に向けられるべきだと考えており、今その最大のお手本は中国にあるのではないかと思います。

アメリカのアマゾンは、顧客第一という点では非常に大きな価値をもたらしていますが、アマゾンが地域社会の発展に寄与しているかというと、そこには疑問が残ります。他方で中国の小売イノベーションは、より実店舗を巻き込んで成長を起こしているため、そこから私たちが学べることは多いのです。

最近は「フィジタル」という言葉もよく耳にするようになりましたが、中国の小売サービスは設計思想においてデジタルとフィジカルの区別がないものが多いです。オンラインとオフラインを分けること自体がすでにナンセンスであり、最初からシームレスな体験が自然に実現できていると感じます。

決済アプリに関しても日本では今熾烈なシェア争いが行われていますが、中国では既にその争いは終わっており、如何にユーザー利便性を高めるかという点に決済事業者も注力していますよね。

ファネルワンで、
知らない分野のベンダーと出会うことができる

会社としても個人としても、新しいアイディアを試してみることを重視しています。ファネルワンを利用し、新しいベンダーに出会うのも非常に楽になりました。分析やデータマネジメントなどの分野では自分でネットワークがありますが、例えばインバウンドのように全く土地勘がない分野だと、ファネルワンを利用することで全く知らなかったベンダーと出会えるのが利点です。

私たちの組織はイオングループ内でのプレゼンスを上げていく必要があるので、共通の課題を抱えているグループ企業に対し、私たちはファネルワンでこのように課題を解決した、という事例を共有していきたいと思います。

買い手の企業として、新しいベンダーの方とビジネスをする前にどうしてもそのベンダーを「利用している企業がどのように評価しているか?」がとても気になるところです。実際私自身も新しいベンダーの方とビジネスを初める際には、他の企業にそのベンダーの評価を必ず確認しています。

買い手企業とベンダーの両方のネットワークを持っているファネルワンに、このようなベンダー選定のプロセスを効率化する機能は期待したいところです。

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